ノンフィクション短編小説  「お父さん、コインランドリーに3度行く」

男は最近、寒い日が時々あり、薄い毛布では寒く感じるようになっていた。
連休前のある日、男は妻にこう言った。

「俺の冬用の毛布ばそろそろ洗ろうちゃらんか?今の毛布では寒うなりよったい。」
妻は予想しない事を言った。
「コインランドリーで洗ってきて。今の時期は毛布が乾かん。」
「コインランドリーやら言うても、俺どげんするか知らんぞ?」
「じゃー、そのまま今の毛布で寝てよ。」

そう言われても洗濯も料理もしない男はとまどってしまった。
なにしろ、生まれて48年、コインランドリーで機械を動かした事がないのだ。
でも今の汚れている冬用の毛布では寝たくない。

しゃーないな。まあ、洗濯のごと、するっちゃろうね。
独身時代に洗濯経験がある男はその時の洗濯と同じと思っていた。
じゃー、洗濯してくるけん、帰ってきて「干しちゃれよ。」
「あ?なんば言いようと?干さんでいいったい。だけんコインランドリーって言いよったい。」

男は妻の言っている「干さんでいい」の意味がわからなかった。
「干さんでいい?」干さな乾かんめーもん?
よく理解できなかったが、なんかコインランドリーでは乾いてしまうようだ。
とにかく行ってみよう。
こうやって男は生まれて初めてコインランドリーに行く事にした。


コインランドリー訪問 初回  11月24日 14時頃
冬用の毛布を持って、男がやってきた。
初めて建物の中に入ったが、ガソリンスタンドのように操作を教えてくれる人は誰もいない。
コインランドリーの機械があるだけで、少なくとも店員らしき人は誰もいなかった。
お客さんと思われる中高年の男女が静かに椅子に座っていた。

目の前の機械が静かにグルン、グルンと回っているのが男の目には妙に新鮮だった。
コインランドリーは若者が来ている場所と思っていた男にはこの場所はなかなか楽しかった。
静かに回り続けるコインランドリー、そして静かに座っているちょっと疲れた感じの中高年の男女。

ああ、そうたい、毛布ば洗濯に来たったいね。
そう言って、現実に戻った男はコインランドリーの機械を初めてマジマジと見た。
機械はお金ではなくカード挿入になっていた。
どうもカードを買わないといけないらしい。
そうやって場所を探して、カード購入器をやっと見つけた。
c0077338_2381072.jpg

まったく予想もしていなかった。
カードを買うのは千円札でしか買えなかった。
とにかく単位が 1000円なのである。小銭はダメなのである。
なぜかこの日、男は給料後だったので、財布に1万円札と5千円札しかなかったのである。
(ちなみに普段、この男の財布は千円札 数枚です(笑)。参考まで)
これで完全にどうしていいかわからなくなった男はこのまま黙って毛布を持って、店を去った。


コインランドリー訪問 2回目  11月24日、夜22時10分。
冬用の毛布を持って、ふたたび男がやってきたのは夜も22時を過ぎていた。

晩飯食べてからくさ。焼酎ば今から飲もうと思いよったったい。
そしたら、そうたい。今のうちに毛布ば洗濯しとったら明日、山歩きが毛布の洗濯の事ば気にせんでゆっくり登れることに気がついたったい。
男の言い訳はこうであった。
最初来た時に両替してまたコインランドリーに来るエネルギーはもう男にはあの時にはなかったのである。
しかし明日、ゆっくり山歩きする事を考えるとと思い直して夜にまたコインランドリーに出てきたのであった。

さて、コインランドリーのカード挿入口で男は固まっていた。
説明文を読んでもどうしたらいいのか、まったく理解できないのである。

千円札を入れても、機械が受け付けずにまた戻ってきてしまう。
何度もその動作を繰り返していた。
5分経過後、いろいろと扱いまわして、やっとわかった。

①まず100円入れて100円でカードを買う。
②そして購入した100円のカードを差し込んだままで1000円札を入れる。
③そうするとカードに1100円との数字のランプが点燈し、記憶する。
④その1100円分のカードを自分が洗濯したい機械に挿入するのである。
ここまでの理解と操作に10分強を要した。
銀行のATMでならブーイング間違いないところであった。

やっとカードを購入していよいよ洗濯だぞーと、今からまさに冒険する少年のような気持ちの男に向こうの方から変な男がつかつかと近寄ってきた。
ちょっと、やばい。
ホームレス風の薄汚れたチャールズ・ブロンソンのような50代の男だ。
c0077338_2336594.jpg

ちょっと、やばい。
しかし、懐かしい顔だ。
チャールズブロンソンじゃないか。大脱走、バルジ大作戦、以来ではないか。
この男が俺に何の用だ?
店内はもう一人の50代の男と、チャールズブロンソンと私の3名であった。

つかつかと寄ってきたチャールズブロンソンが私に教えてくれた。
「ここは22時半で閉まるばい。
今、22時10分やろ、あんた、今から洗濯したら、ここ間に合わんで閉まるばい。」

意外な事をチャールズブロンソンは教えてくれた。
この人な何だろう?ここで暮らしているのか?店の人か?
よくわからないがやさしい人であった。
それより、俺はコインランドリーは24時間営業と勝手に思い込んでいた。
看板をみると、朝7:00~22:30までとなっていた。
危ないところであった。
カードも買って、少年のように好奇心でウキウキしていた男はちょっと落ち込んでいた。
こうしてまた、2回目でも洗濯ができずスゴスゴとまた男は帰って行った。


コインランドリー訪問 3回目  11月25日、 15時頃。

冬用の毛布を持って、男がまたやってきた。
昨日と違い、男は山登りを終わったせいか、気分はゆったりしていた。
しかし男は腹が減っていた。
山で昼食をとらず、そのままダイヤモンドシティ。フタバ図書に行って、25000分の地形図を購入し、コインランドリーでの待ち時間を計算して、中華弁当 マーボ豆腐 398円をちゃっかり買っていた。
さすがにコインランドリーも3回目ともなると操作がわかりそうだ。
小さい機械にカードを入れて動き出した時は男はさすがにホッとした。
機械が動き出すのを確認してやっと男は中華弁当(マーボ豆腐入り)を食べ始めた。
ホッとしたせいか、
男の胃袋ではこの弁当ごときではまったく足りず、このあとみかん4個、ビスケット、パンとか異常な食欲を見せていた。
c0077338_09016.jpg



しかし動きながら洗剤の少ないのが気になっていたが、なんとかこれくらいでいいようであった。
コインランドリーの機械がクルン、クルンと回りながら、黒い汁(汚れ)が出てくるのが、どんどんきれいになっているようで嬉しかった。

そうこうしていたらテレビで競馬 ジャパンカップの映像が流れてきた。
そうたい、今日はジャパンカップたい。
思えば30代からずっと競馬してきて今の時期、間違いなく佐賀競馬か自宅で眉間に縦しわを寄せながら、赤マジック持って競馬ブックでレースを予想していたのであった。

それが今はコインランドリーで毛布の汚れが落ちているのを嬉しそうにしている自分がおかしかった。
博打をしている時は、少なくとも自分の身のまわりの物にはまったく無頓着だったからだ。
「フフッ。俺も堅気になったもんだぜ。」そう男は心の中でつぶやいた。

すすぎまで終わり、次は乾燥である。
c0077338_011982.jpg

男は実は今まで、コインランドリーにこの乾燥の機械がある事を知らなかったのである。
普通どおりのすすぎが終わって、自宅で干すものと思っていたのであった。
これで妻が言っていた意味がやっとわかった。

さらにここで他の人の布団がクルン、クルンと回っているうちにふっくらしているのを目の前で見たのですべてをやっと納得したのであった。

この乾燥は30分、  3回した。毛布が30~40分と書いてあったからだ。

出てきた毛布を見て、びっくりした。
まだ温風乾燥なので、毛布は少々熱かったが、完全にきれいにさらにフックラなっていた。
さらにいつもついていた毛もきれいにとれている。
うん、看板に書いているだけの事はあるばい。
フックラしている毛布をさわりながら、男はとても感動した。
c0077338_0155269.jpg


こうして、男はコインランドリー3度目にして、上機嫌で帰っていったのであった。
経費 カード購入100円と1000円で1100円。
カード残 380円。(ココアがカードで買えた)

以上、まったくくだらん話で申し訳ありません。
最後まで読んでくれてありがとう~♪
この男誰だかわかりますよねえ?
ちょっと、感動のコインランドリー初体験でしたあ~。

しかし、1枚の毛布を洗濯するのに、3回も来る奴って俺くらいですよねえ。
[PR]

by katuyamak | 2007-11-25 23:20 | Comments(8)

Commented by Hiro at 2007-11-26 15:15 x

自分の毛布は、自分で洗わないと冬を越せない
可哀そうな「男」さんには申し訳ないけど、

「コインランドリー訪問 初回 」 では、笑いが止まらず、
「コインランドリー訪問 2回目」  では、笑いすぎて涙が出ました。
「コインランドリー訪問 3回目」  は もう、読めません。
       これ以上笑ったら苦しいです。明日にしときます。
  
Commented by katuyamak at 2007-11-27 00:20
Hiroさん、今晩は~
私の処女作の小説読んでもらってありがとうございます。
私としては全身全霊を打ち込んだ力作のつもりです。
(2~3時間でサクサクと書き込みましたが・・・・)
また気分が乗ったらこんな遊び事も時々してみようと思います。
書いた本人が一番おかしくて、けっこう楽しんだんですよねえ。
Commented by そよかぜ at 2007-11-27 12:17 x
なかなかの力作 恐れ入りました。
なにより感心したのは一人コインランドリーに立ち向かった勇気。(^o^)  現代のブロンソンはこんな所に生きていたのですね。 ご自分で洗濯した毛布はさぞや暖かいことでしょう。
日常の一場面を切り取って文にするって、ステキですね。なかなか集中して取り組むことが難しくなっていますので、ヒラメキがあるときに一気に書き綴るといいのかもしれませんね。
ユーモアに満ちた楽しい文でした。せっかくだからユーモア大賞かなんかに応募してみたら。でも、未発表のものとなっているので、、、だめかな?
Commented by お母ちゃん at 2007-11-27 16:52 x
お母ちゃんにも未知なコインランドリーが良く分かりましたよ
そして展開がおもしろい毛布を洗い終えるまでの広がり
次を読もうと言う気にさせる

「フフッ。俺も堅気になったもんだぜ」ここでは最高に笑いました
そしてお母ちゃんは言いました「まだ堅気になっとらん」と(笑)
山へ行っても毛布の事が気になる、肉まんさんらしい几帳面さ
3日目こそは毛布を洗う意気込み
そしてついにふっくら毛布にたどりついた。
ブロンソンの登場いい役でしたね、3日目までひっぱれます。
マックイーンは雑誌でもよんどったろうか。
Commented by そうだったの! at 2007-11-27 22:48 x
博多の肉まんさん こんばんは~*

語り口調が良いです、思いっきりの博多弁が懐かしい~ *^^*
「コインランドリーへ・・・ あらあら感心~♪」なんて思っていたら、カードの購入でつまずき、時間切れでつまずき、3度目の正直は「よかったよかった!!」・・・でもおかしい  *^^*
日常にあり得ることなので、ホントにおかしい!!

肉まんさんが「小説処女作」 と聞いてきのこは、 「肉まんさんは、つよ~い感受性と意志の強さを感じる人」だから、個性的でインパクトのある表現が出来ると思いました。 小説は合っていると思います。 感じたことをまっすぐに表現して、これからは、短編小説が生まれそうですね!!

楽しみにしています。
Commented by 肉まん at 2007-11-28 01:07 x
そよかぜさん、今晩は~
コメントありがとうございます。
これからも遊びでちょこちょこ書いてみるかもしれません。
読んでいる人の心が和むような文章が理想かな。
ありがとう。
Commented by 肉まん at 2007-11-28 01:09 x
お母ちゃん、今晩は~
小説は自分で書いて自分でとにかく楽しくて笑ってしまったので、こんな気持ちで書いていればいいんでしょうね。
あ!それと俺、もう堅気になってますんで。
すっぱり足洗いましたあ~。これからもよろしくです。
Commented by 肉まん at 2007-11-28 01:14 x
きのこさん、今晩は~
きのこさんも童話とか絵とかで時々表現されてありますよね。
きのこさんの感性でどう受け止めてもらったか気になってましたが、おかしくて笑っていただいたようでよかったです。

感じたことをまっすぐに表現。
う~ん、すぐメモやね。コメントありがとう。